地域熱供給(DHC)とは

Approach2 熱の脱炭素化に向けた取組

カーボンオフセット熱の供給の開始

  • 2024年度に導入された熱供給事業者別排出係数制度により、地域熱供給事業者は需要家に対して、カーボンクレジット等を活用した環境価値(カーボンオフセットした熱)の提供ができることとなった。需要家は、この環境価値を享受することにより、SCOPE2のCO2排出量の削減が可能となる。
  • 熱業界は、需要家のニーズに対応したカーボンオフセットした熱を提供する取組により、需要家、ひいては街の脱炭素化に貢献していく。

※SCOPE2:自社で他者から供給された電気、熱、蒸気を使用したことによる間接搬出の温室効果ガスの排出量。温対法の算定・報告・公表制度(通称SHK制度)に基づき、当該排出量を算定し、国に報告しなければならない。国は当該報告を審査し公表する。

熱供給事業者別排出係数制度を活用したカーボンオフセットした熱の供給(イメージ)と導入事例

再エネ熱・排熱の有効利用システムの実装

  • 再エネ熱・排熱の有効利用システムの実装により、街の脱炭素化や地域課題を解決する最適なサービスを提供する取組を進める。
再生可能エネルギー熱利用
分類太陽熱利用地中熱利用地熱(温泉熱)利用温度差エネルギー利用
概要太陽熱を集熱器で集め,給湯等に活用地中熱を熱源とし、ヒートポンプによる空調等に活用温泉や温泉排湯を熱源とし、ヒートポンプ等による空調・給湯等に活用地下水、河川水、海水、下水などの流体を熱源とし、ヒートポンプによる空調等に活用
事業者北海道ガス、東京ガスエンジニアリングソリューションズ、東京熱供給北海道ガス、東武エネルギーマネジメント立川都市センター(プール,温泉排水熱)東京ガスエンジニアリングソリューションズ(地下トンネル水熱)、東京都市サービス(河川水熱,下水処理水熱,地下水熱)、虎ノ門エネルギーネットワーク(中水熱、下水熱)、関電エネルギーソリューション(河川水熱)
分類と各イメージ図:環境省「再生可能エネルギー熱利用の概要・導入事例(2022/3)」より
その他の熱利用等
分類空気熱利用設備排熱・ビル排熱利用その他


北海道熱供給公社(フリークーリング)
丸の内熱供給(フリークーリング)
丸の内熱供給(中水排熱・インタークーラ排熱)、東京都市サービス(変電所排熱)新宿南エネルギーサービス(小水力発電による電力回収)
北海道における地中熱・太陽熱利用
  • 地中熱太陽熱の有効利用
  • 太陽集熱器は積雪対策のうえで設置(設置角度55°)
  • ボアホール方式による地中熱利用(ヒートポンプ熱源として)
  • 天然ガスコージェネを温水、冷水などに多段階活用

【導入効果】

  • エネルギー削減:4kL(原油換算)
  • CO2削減:6t

北海道ガス資料より作成

竹芝地域における太陽熱利用
  • 太陽熱集熱設備を建物屋上に導入
  • 他社所有のコージェネとともに吸収式冷凍機へ熱供給や、熱交換器を介して温水熱源としている。

【導入効果】

  • 太陽熱利用熱量 350GJ/年
    (令和5年度実績)
    ※ 集熱面積200㎡

東京熱供給資料より作成

北海道における地中熱利用と街区外連携
  • 街区内の天然ガスコージェネと街区外の再エネと連携
  • ボアホール方式による地中熱利用(ヒートポンプ熱源として)
  • 蓄熱システム及び逆潮流可能なコージェネにより、街区外に設置された再生可能エネルギーの需給バランスを調整する
    バイオガス発電所とも連系)

【導入効果】

 プラント導入による 街区全体での効果として

  • 省CO2率:35%見込み

北海道ガス資料より作成

地中熱利用ヒートポンプシステム
  • 地中熱ヒートポンプシステムを採用
  • 基礎杭利用方式ボアホール方式の2つを併用
  • 熱源水温度を実測し、運転時間を見直すことで更に熱製造量1.47倍に

【導入効果】

  • 省エネ率:20%

東武エネルギーマネジメント資料より作成

風呂・プールの排水熱の有効利用
  • ホテルのプール温泉排水熱を排水槽に貯留
  • 貯留した排水をヒートポンプ熱源として熱利用
  • 温熱を暖房用温水に有効活用

【導入効果】

  • 省エネ率:60%
    ※通常のボイラー比

立川都市センター資料より作成

高崎地区における地下水熱の有効利用
  • 地下水熱をヒートポンプ熱源として有効活用
  • 60m以深の地下水を汲み上げ熱利用したのち還水井に戻す

【導入効果】

  • 省エネ率:47.1
  • CO2率:28

東京都市サービス資料より作成

幕張新都心における下水処理熱の有効利用
  • 下水処理水熱の温度差エネルギーを活用した蓄熱式ヒートポンプを導入

【導入効果】

  • 省CO2率:50%

東京都市サービス資料より作成

虎ノ門における中水熱の有効利用
  • 需要家の雑排水槽の貯留水の中水熱をヒートポンプ熱源として有効活用
  • プラントの年間熱製造量の1.5%を賄う

【導入効果】

  • CO2削減:13.4t

虎ノ門エネルギーネットワーク資料より作成

隅田川における河川水熱の有効利用
  • 河川水熱の温度差エネルギーをヒートポンプ熱源として有効活用
  • 気温の低い夜間に蓄熱する

【導入効果】

  • 省エネ率:39.5
  • CO2率:21

東京都市サービス資料より作成

中之島における河川水熱の有効利用
  • 河川水熱の温度差エネルギーをヒートポンプ熱源として有効活用
  • 直接利用と熱交換器を介した間接利用を併用

河川水

導入効果プラント1

  • 省エネ率:32%
  • 省CO2率:26%

【導入効果プラント2】

  • 省エネ率:51
  • CO2率:46

関電エネルギーソリューション資料より作成

下水道管内の下水熱の有効利用
  • 下水道管から採取した下水熱を熱源水とした下水熱ヒートポンプチラーにより冷却。
  • 特別区道下に整備される下水道本管内に、全⾧約200mの下水熱利用熱交換器を設置。管底設置方式の下水熱をDHCに活用した事例は、本事業が国内初。

導入効果

  • 省エネ率:36
  • CO2率:39

虎ノ門エネルギーネットワーク資料より作成

寒冷地における空気熱の有効利用(フリークーリング)
  • 冬期は、オフィスや商業施設に対しフリークーリングによる冷水を供給。
  • 中間期も冷水の予冷として空気熱を有効利用。

導入効果

  • 冬期省エネ率:88
  • 中間期省エネ率:11

北海道熱供給公社資料より作成

田町スマエネパーク 再エネ熱の有効利用
  • 太陽熱、地下トンネル水熱等の活用
  • エリア全体でエネルギーを有効活用するシステムを導入
  • 立地条件を活かし、地域熱供給で初めて大規模に太陽熱集熱器を設置
  • 太陽熱から作った高温水をコージェネ排熱とあわせ、冷暖房・給湯のエネルギー源として活用
  • 歩行者デッキでは太陽熱利用を見える化
  • 年間を通して温度変化の少ない地下トンネル水を有効活用
  • 冬は暖房の熱源として蒸気吸収ヒートポンプに、夏は冷却水としてスクリュー冷凍機で熱利用
  • 年間で約3065%の省エネに貢献

東京ガスエンジニアリングソリューションズ Webサイトより作成

横浜市庁舎エリア エネルギーの面的利用
  • 下水再生熱を、トイレ洗浄水として再利用される前に有効活用
  • コージェネ排熱利用

記者発表資料(令和3年1月28日)より作成

  • 熱供給事業者・需要家・建物管理者の3者による効率運用省エネ推進活動

【導入効果】

  • 省エネ率:53.2
  • CO2率:44.1

東京都市サービス資料より作成(図は、記者発表資料(令和3年1月28日)を引用)

  • 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)には、帯水層蓄熱および海水冷熱を利用する熱供給システムの導入が決定。再生可能エネルギーの徹底利用水素利用技術カーボンリサイクル技術等を国内外に発信予定。
帯水層蓄熱システム
  • 帯水層は、礫(れき)や砂からなる地下水の多い地層
  • 断熱性が高い特徴を活かして、冷熱の蓄熱に活用
  • 同様のシステムはうめきたアミティ舞洲にて実証済み

【帯水層蓄熱システムのメリット】

  • 省エネルギー・省CO2(従来システムより約35%省エネ)
  • ヒートアイランド現象を緩和(空調から排熱の放出ゼロ)
  • 持続可能な地下水の保全と利用(地下水を全量環水)

2025年日本国際博覧会協会資料より作成

EXPO2025 グリーンビジョン
  • 大阪・関西万博の準備・運営を通じて持続可能性の実現を目指し、脱炭素・資源循環に関して方向性や具体的な取組等について策定
  • 2050年カーボンニュートラル実現の一つの方向性として、再生可能エネルギーの徹底利用が位置付けられており、万博をきっかけに導入が進むよう、帯水層蓄熱システムが紹介される。

2025年日本国際博覧会協会資料より作成

関係業界等と連携したクリーンガス(e-methane)の導入

  • 都市ガスを脱炭素化する技術の中で、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を反応させ、天然ガスの主な成分であるメタン(CH4)を合成する「メタネーション」が注目されている。メタンは燃焼時にCO2を排出するものの、メタネーションをおこなう際の原料として、発電所や工場などから回収したCO2を利用すれば、燃焼時に排出されたCO2は回収したCO2と相殺され、CO2排出が実質ゼロとなる。
  • 資源エネルギー庁電力・ガス事業部の研究会として開催された「2050年に向けたガス事業の在り方研究会を通して、2030年に都市ガス導管への注入1%以上、2050年90%の目標を設定
(事例)横浜市と東京ガスのメタネーションの実証試験
  • 東京ガスは、横浜市と連携協定を締結し、同市鶴見区末広町にある横浜テクノステーションでメタネーションの証試験に取り組んでいる。
  • 同地区内にある横浜市資源循環局 鶴見工場(ごみ焼却設備)の排ガスの中から分離回収するCO2(主にバイオマス由来)の提供を受け、さらに横浜市下水道河川局 北部下水道センターの消化ガス(下水汚泥を処理する過程で発生するバイオガス)、再生水(下水処理した水をろ過した水)など環境負荷の低い資源を原料として提供を受けることとしている。 (令和4年1月報道資料より)

関係業界と連携した水素の導入

  • 政府は、2023年6月、水素社会の実現を加速化するため水素基本戦略を改訂。その中で、地域における水素利活用の促進自治体との連携の推進が盛り込まれた。熱業界は、地域特性を前提としつつ、自治体と連携した水素利活用の可能性を検討していく。
全国初となる地域熱供給への水素混焼ボイラーの実装に向けた研究開発の実施
(グリーン水素を活用した臨海副都心の脱炭素化に向けた取組)
  • 東京都港湾局、産業技術総合研究所、清水建設、東京臨海熱供給、東京テレポートセンター及びヒラカワは、脱炭素化に向けた取組を推進するため、臨海副都心の青海地区において、グリーン水素を活用した事業の取組を開始。全国初となる水素混焼ボイラーによる地域熱供給や水素と太陽光による電力供給モデルの構築に向けて共同研究を実施する予定。
  • これらの取組による先進的技術の実装や取組機運の醸成を通じて、臨海副都心の脱炭素化を推進

※水素混焼ボイラー:都市ガスとともに水素を燃料とするボイラーであり、水素燃焼分はCO2を排出しない。

東京都資料より作成

水素専焼ボイラーの開発
  • 水素は燃焼時の生成物が水のみ(2H2+O2⇒2H2O)であるため、2050年のカーボンニュートラルを見据え高効率で低NOxな水素専焼ボイラーの開発・製品化が進んでいる。太陽光発電等の再生可能エネルギーで水を電気分解(2H2O⇒2H2+O2)することによるグリーン水素を生成する取組も進んでいる。
水素を燃料としたボイラーの開発
  • 三浦工業株式会社は、水素専焼ボイラーの開発等を通じて2050年のカーボンニュートラルへの貢献に向けて取り組んでいる。
水素サプライチェーンモデル構築に向けた連携協定の締結と実証運転
  • 三浦工業株式会社は、愛媛県、四国電力株式会社と四国初の水素サプライチェーンモデル構築プロジェクト事業実施に向けて連携協定を締結し、水素ボイラーの実証運転に取り組んでいる。

愛媛県 :両社の実証事業で得られた知見の共有を図る勉強会等の  開催により県内水素関連産業の発掘・育成につなげるなどの普及啓発。

四国電力:同社の松山太陽光発電所(出力:2,042kW)で発電したCO2フリー電気を用いて、水素を製造。

三浦工業:工場内の既設ボイラに水素ボイラを併設し、四国電力が製造した水素を用いて 水素ボイラの実証運転を実施。

地域熱供給(DHC)とは

地域熱供給 バーチャル工場見学