当協会では、2020年2月に「地域熱供給の長期ビジョン」を発表しました。
本ビジョンでは、2030年において地域熱供給が提供できる温室効果ガス排出量削減等の社会的課題解決のソリューションを提示しています。
また、2050年に向けて、地域熱供給が、脱炭素化やエネルギーの需給形態の変化に柔軟に対応して、都市や街区の活性化と強靭化、街の魅力向上に資する新たなサービスを提供する「DTS」(District Total Service:地域総合サービス業)へ進化を描いています。
我が国で本格的な地域熱供給が始まり50年が経過した。地域熱供給はこれまで、大気汚染の防止、省エネルギーの推進、温室効果ガスの削減、 ヒートアイランド現象 の緩和など、その時々の社会課題解決に貢献し、現在、19都道府県において、75社の地域熱供給事業者により、134地域で事業が実施されている。
現在、我が国では、低・脱炭素化、都市や街区の強靭化、地方経済の活性化等の社会課題への対応が求められている。2016年の熱供給事業法改正で自由化された熱供給事業としても、これらにどのように応え、事業を発展・進化させるべきかについて、個社を超え業界として検討すべきとの認識から、2018年2月に当協会内にワーキンググループを設置し検討を進めてきた。
エネルギー関連システム改革を受け、市場での競争環境変化などエネルギーを取り巻く状況は大きく変化していくが、地域熱供給のポテンシャルを活かし、さらに進化させることで、社会課題の解決に貢献することが可能で、地域における多様なビジネスチャンスも生まれる。これらをビジョンとして取り纏め、熱供給事業者と共有するとともに、広く社会に対し発信していくこととした。
1.社会課題の解決に貢献する DHC のソリューション(2030年)
地域熱供給(DHC(District Heating and Cooling))が持つ強みと実績を活かして、以下の4つのソリューションを提供し、2030年に向けた社会課題の解決に貢献する。
CO2排出量についての低炭素化シミュレーション試算では、2030年までの機器効率の向上等も考慮し、大都市モデルで2013年比43%以上、地方都市モデルで同46%以上の削減が可能との結果を得た。
2.DHCソリューションを実行する3つの役割
DHCが提供するこれら4つのソリューションにおいて、DHCの役割は以下の三つに整理できる。 (スライド3、4)
3.2030年以降のDHCの進化
現在、DHCにおいても、熱電一体供給への転換、お客様と連携したエネルギーマネジメントサービス提供等の動きが始まっている。DHCは、2030年以降、三つの役割を拡大し、地域の総合コーディネーター役を担いつつ、さらに進化していくことが期待される。
すなわち、
そして、2050年、脱炭素化への急速な進展、少子高齢化と人口減少、都市集約化・複合化・多様化、「Society5.0」が描く未来社会への進化などが想定される社会においては、さらなる脱炭素化やエネルギー需給形態の変化に対応すると共に、ビッグデータを活用した都市や街区の強靭化や活性化、街の魅力向上に資する新たなサービスの提供を図ることにより、DHCは「DTS(District Total Service、地域総合サービス事業)」に進化していく。(スライド6)
4.2050年の社会における「DTS」のイメージ
DTSは、そのプラントと3つの役割をコアとして、まちの中で人やものを総合的にサポートする。
そして、エネルギーネットワークとデータネットワークの結節点に立ち、複合化・多様化した都市のコーディネート役として、地域に密着した様々なサービスを提供することにより、地域と共に脱炭素社会の実現と賑わいのあるまちづくりを推進していく。(スライド7、8)